むつ商工会議所
「商工会議所報むつ ダイジェスト」
     第7号(平成10年10月31日)
     ●むつ市訪米団参加報告
     ●全国ひらカナサミット参加報告
     ※中小企業安定化特別保証制度
     ※コンピュータ2000年問題
     ※青森県最低賃金
     ※国の教育ローン制度の概要等

むつ市は日本のウッヅホールになれるか
海洋研究都市を目指し、米国ウッヅホール海洋研究所を視察
 
常議員・産業政策委員長 山本文三氏のレポートから(全文掲載) 
 
「むつ市米国訪問団」参加報告書
 
                 むつ商工会議所 産業政策委員長 山 本 文 三
 
 アメリカがまだほんとうに若い国の頃、「若者よ、西へ行け」という言葉が東海岸で流行した。時が移り、20世紀末のむつ市で、今私たちは「若者よ、東へ行け」の大合唱に耳を傾けている。当然のことながら、この場合の「東」とは決して東通村のみを指しているのではない。
 海洋地球研究船「みらい」の母港として、また国際海洋科学研究都市を標榜するむつ市にとって、ウッズホール海洋研究所は果たして“約束の地”なのか?むつ市は日本のウッズホールになれるのか?その答えを見つけに9月20日から29日まで杉山市長の訪問団に同行した。奇しくもこの日は丁度、小渕首相の訪米と同じ日であった。円安が懸念される中、日米首脳会議の成果に期待して、ポートエンジェルス市で温かいピザを食べた。
 そのポートエンジェルス市(以下PA市)では、PIRA=PA国際交流協会の案内で、市役所を表敬訪問、ブローン市長と杉山市長のトップ会談が行われ、4年目を迎える姉妹都市の交流と今後について話し合われた。
 市内視察では、今年完成したばかりの郡立図書館を見学。平屋建てのバリアフリーはむつ市のそれと同じか。コンピューターで本の検索、インターネットの利活用等で最新システムが整っていたが、一番驚いたのは、作家のレイモンド・カーヴァーゆかりの地であったこと。不覚であった。事前予習不足を嘆く結果になってしまった。その彼の名がメモリアル・ホールに名前を刻んでいた。日本庭園らしきものもあった。大昭和製紙アメリカ本部では、タマキ所長と懇談。PA市との関わりとPIRAへの支援について説明を受ける。
 PA商工会議所主催の昼食会では、杉山市長のユーモアまじりのスピーチに拍手喝采!市長の挨拶には定評があるが、アメリカでもその博識ぶりが遺憾なく発揮されていた。同行者として心強い限りであった。PA市の学校及び教育事務所の訪問で、教育の指針となる“Quality・・・first”のテーマは教育に限らず、他の分野でも充分通用するものであると感じた。3日間のPA市での行事を終え、シアトルからボストンへ3時間の時差を飛び越えて、東海岸、マサチューセッツ州、ファルマス町へアメリカ大陸を横断した。
 ウッズホールを含む、8つの村から成り立つこの町は、ボストンより南々東約100qのところにあり、人口約29,500人。ただし夏場はリゾート地であるため9万人近くまでふくれ上がる。以前は捕鯨と羊毛が主産業であったが、現在はクランベリーの輸出と観光が主力となっている。
 ウッズホール海洋研究所(WHOI)は海洋学における世界最高の研究機関。海洋物理学、海洋生物学、海洋地質学等の各分野に超一流のスタッフを揃えている。職員数は約950人で、研究資金は実に8500万ドルにのぼる。アトランティスU等の海上船5隻を保有、他に深海潜水調査船や無人探査機をも所有しており、蛇足ながらタイタニック号の撮影にも成功している。他にウッズホールには、海洋生物研究所、米国海洋大気庁漁業局研究所、米国地質調査所大西洋海洋研究所も立地しており、WHOIに関連する試験、分析機器等の工場もサイエンス・パークとして立地している。そのうち3社を見学したが、いずれも生産工場ではなく、開発工場であり、多数のパテントを取っているのが特徴的であった。ここでは学者が「産業おこし」をしているのである。社長やスタッフが博士号を取得している学者ゆえになせるワザなのかも知れない。しかも、家族でここに居を構え、生活の拠点を置いているのである。この点に関して、WHOIの所長曰く、「住みやすい環境づくりのために行政と住民が、70年もの歳月をかけて努力した結果である」と語ってくれた。そのひとつの例として教育環境を良くすることと、研究者に対する住居の提供や、学者の配偶者に仕事の機会が与えられたことだと言う。事実、ファルマス・アカデミーという私立高校の教師に学者の配偶者がいたりした。また、この学校はハーバードやオックスフォード大学に多数の進学者を出しているわりには、進学のための特別なカリキュラムもなく、あくまでも基礎学習が中心である。そこから興味のあるもの、あるいは才能を伸ばすことに力点が置かれており、それが例えば美術であれ、科学であれ、得意なものを育てる教育が行われているのである。長所進展法とでもいえるこのやり方に現場の教師たちが誇り、自信をもっている様子に、改めて教育のあり方を垣間見た気がした。
 子供たちが自分たちの住んでいる国を誇り「まち」を誇る。学校、友人を誇り、自分自身を誇り、そして正義を誇る姿にこの国の健全さが伺い知れる。翻って、私たちは子供たちに私たちが生まれ住んでいる国、日本を、悪い国だと教えてはいないだろうか。
 「国としての品格は、その国民が自分は偉大なる民族に属するのだという感情に支えられ、そこから力を得るものである。先祖の偉大さを受け継ぎ、先祖の栄光を永続させるべきだという風土がその国に出来上がった時に、国家としての品格が高まる」サミュエル・スマイルズは「品性論」でこう唱えている。言い得て妙である。まちづくりのディグニティが問われている昨今だが、ファルマスのまちに「森の中の一本の木」を見る思想があったように思う。まちづくりは一朝一夕ではいかない。宿命的永久運動であることをこのまちは証明している。なかんずく、WHOIの本庄博士は杉山市長をして“Over Bridge ambition”と称賛して止まない。その杉山市長は、自分が架けた橋の上から、国際化の深層を鳥瞰しているのだろう。おそらく、手元には、「深海掘削船」という海図を広げて。
 帰国するその日、アメリカはマグワイヤ選手の前人未踏の70号に沸いていた。その熱狂の中、私は杉山市長がファルマスとの友好関係に貴重なタイムリ−・ヒットを放った瞬間に居合わせることができたことの、両方に陶酔した。
 これで、むつ市の国際化がまた一歩前進したと胸を張って言いたい。やっぱりむつ市は日本のウッズホールにならなければならないと、太平洋の上を飛びながら、世界に貢献するむつ市の姿を夢想した。
 追記:そういえば、ウッズホールの浜辺には、むつ市と同じようにハマナスの花が可憐に咲いていた。地元の人々はこの花を“Beach Rose”の愛称で呼ぶらしい。海の青さと見事なコントラストを描いて、いっぷくの絵をおりなして見えた。
極めて印象的な光景であり、今後のむつ市とウッズホールの関係を象徴しているかのようであった。
 
 

第9回全国ひらカナ市町村サミットinニセコ
どんなイベントでも参加することで何か得られる
 
むつ商工会議所常議員 国際情報化委員長 高橋 一氏のレポートから
 
 第9回全国ひらかなカナカナ市町村サミットinニセコの会議に参加して、期待していなかった割には、久しぶりに身になるお話、情報を沢山得ることができました。どんなイベントでも参加することによって自分自身に何か得ることを改めて自覚させられました。
 このサミットの主催者であるニセコ町逢坂誠二町長の30代らしいさわやかさと、この会議のあり方について、熱っぽく話されたのが非常にうれしかったです。
 また、基調講演「観光を核とした地域の活性化について」をテーマとして、東京大学教養部長の大森彌先生のお話も時間を忘れさせるほど、軽いタッチで、中味の濃さに驚くばかりでありました。内容として、大森先生は例えば、北海道のワイン城で有名な池田町を例にして、あの建物を見ることよりも、そのことを企画、準備実行にたずさわった沢山の人々を知ることが大切である。もう一例として、大分県湯布院町の現状を考えるに、一般的に観光が発展すると農業がだめになるが、それが違っていた。農産品を利用して温泉旅館との共存を計っている。地域とは文化である。水とみどりの調和こそ文化そのもであり、自然を大切にすることが人を育てることである。大きな施設やものは人を駄目にしてしまう。人生で一回みたらもう二度と見なくても良い地域を観光地という。観光地を造って、沢山の人々を誘致することは、邪道であるとまで言いきっておりました。
 最後に大森先生は、人造りの大切さをお話になりました。過疎になる地域は母親の幼児からの教育に問題があるということです。それは、自分が住んでいる地域のすばらしさを教えなかったからであり、特に女の子に十分に教育していれば、大人になってそこに住み家庭を造るようになるとのことです。
 本当にこの講演のすばらしさ!その後の分科会での伏島先生の地域を良く見る見方は本当に勉強になりました。ありがとうございました。